住んでいる市の一番の繁華街には地下街が縦横無尽に広がっている為、その複雑さからダンジョンと呼ばれているらしい。昔から歩いているので迷う事はあまりないけれど、一角にある駅前ビルの地下だけは本当に迷宮だと思っている。
そこは駅前第1ビルから第4ビルまであって、子供の頃からもう何十年も歩いているけれど未だにまったく把握できなくて行くたびに迷う。
第1から第4まですべての地下1、2階には飲食店がびっしりとひしめいていて、安価な居酒屋をはじめ、喫茶店、金券ショップ、ジム、ドラッグストア、花屋なんかもあり独特の雑多さと、ずっと変わらない景色と雰囲気、賑やかな音と匂いも自分には心地良い。
店舗の移り変わりも早く、目印にしていた店が見当たらないと目的地にはもうたどり着けない。
どこを歩いているのか分からなくなる事は常で、一度行った店に再び行こうとしてもどこにあったのかすら分からない。(実際に20年近く探しているお店があるのだけれどいまだ見つからない)
それでも思いがけないお店を発見する事も多々あり、それが楽しくてわざと通った事のない通路に入って 自ら迷子になってみたりもする。 つい先日も今までまったく知らなかった場所にたどり着いた
仕事終わりの帰り道、駅前ビルを通り第2ビルでエスカレーターに乗る時ふと壁を見ると 「徳兵衛大明神 3階屋上」と書かれた案内板がある。さらには「 毎月縁日 8日18日28日」とある。
このビルにも、このエスカレーターにも数え切れないくらい乗っているのに、その案内板に初めて気が付いた。一旦はそのまま帰りかけたのだけれど、どうしても気になり屋上と書いてある3階(第2ビルは16階建て)まで上がってみる。
3階はオフィスフロアになっていて、神社や屋上という雰囲気はなく不安になりながらも外と思われる 明るい光が差す方へ行ってみると、ガラス張りになっていて外に出入りができそうな場所にでた。 見ると車が数台停まっていて一部駐車場として使われているようで、車が並んでいる奥を見ると、 小さな赤い鳥居が見えてそれが徳兵衛大明神なのだと分かった。
なんだか納得してそれ以上は近づかず、帰ってから色々調べてみたのだけれど、昔徳兵衛さんという方が 荒れ果てた祠を奉ったところ様々なご利益があったそうで、ビルが建てられた時には有志が再復興させて、今も大切にされ愛されているとの事。
なんだかポツンと寂し気に佇んでいるように見えたのだけれど、振興会の方々がいつも手入れをされていて、お参りに来る方も多数いるそうで大変大事にされているようす。 長年通っているのにまったく気がつかなかった。
そして気になる縁日。該当日に行かれた方が書かれたものによると、特に何もやっていなかったらしい。 縁日というと屋台の金魚すくいやヨーヨー釣りが頭に思い浮かぶけれど、本来の縁日の意味は神様仏様と ご縁のある日との事で、いつもの何倍もご利益が得られる日だそうな。
知らない場所が今もたくさん潜んでいる駅前ビル、初めて知った徳兵衛大明神さんは大変ご利益があるそうなので今度はきちんとお参りに行ってまいります。